こんにちは!プロモデラー林哲平です!
「究極の作例を作る」をテーマに予算、時間、手間など全てのリミッターを解除して思いのままにガンプラを作るホビージャパンメカニクスの連載企画「林哲平の機動模型超級技術指南」
HJメカニクス06号掲載の第6回は「1/144 Ex-Sガンダム」!
「ガンダムセンチネル」掲載のカトキハジメ氏の伝説的なイラスト版Ex-Sガンダムの肩や脚部の大きな独特のスタイリングをMG、HG、旧キットのミキシングにて再現 。
ポージングの解説や工作ポイント、フィルタリングを使ったセンチネル風空気遠近塗装などを徹底解説しています。
至高のEx-Sガンダム「REAL Ex-S」
Ex-Sガンダムのプラモや商品が発売されるたび、「頭が大きい!」「肩が小さい!」「胴体が太い!」「脚が短い!」という声を聞いたことがある人は多いはず。
私がちょうど大学生のころMG Sガンダムが発売されたのですが、友人がプロポーションについて物凄く怒っていたのを思い出します。
では、世間のEx-S好きは一体何を基準に「頭が大きい!」「肩が小さい!」「胴体が太い!」「脚が短い!」と叫んでいるのでしょうか?
それはズバリ、月刊モデルグラフィックスで連載された伝説的企画「ガンダム・センチネル」掲載のカトキハジメ氏によるイラスト「REAL Ex-S」、およびそのイラストを立体化した螺子頭ボンド氏withセンチネルワークスの製作したフルスクラッチのEx-Sガンダムが基準となっているのです。
巨大な肩に極端なまでに小さな頭部、ほとんどZZ並みの太さとボリュームと、さしずめ「MS版ディープストライカー」と言ったスタイル。
イラストは超かっこいいのですが二次元の嘘が結構あって、上半身は上から見下ろした姿、下半身は下から見上げた姿が融合しており、これをフル可動、量産化前提のガンプラやトイとして発売するのは非常に無理があります。
手に入れるためには自分で作るしかなく、これまで数多くのモデラーが挑んできたチャレンジブルなガンダムなのです。
これまで「REAL Ex-S」の作例といえば、そのほとんどが螺子頭ボンド氏の作例を基準にしたものがほとんどでした。
螺子頭ボンド氏の作例は現在見返しても全く遜色のない、まさに伝説の名にふさわしい作例で、すでに決定版がある以上、これをそのまま真似するのはあまり「超級技術指南」としてはふさわしくないと感じまして。
今回はさらなる原点である、「REAL Ex-S」のイラストの完全再現にチャレンジすることにしたわけです。
それではいざ「REAL Ex-S」行ってみましょう♪
3つのEx-Sを組み合わせる!
「REAL Ex-S」は巨大な肩や極端に小さい頭に目が行きがちですが、ほとんどZZのような重MS系プロポーションが特徴です。
これを純粋に改造で再現するのは大変なので、HGをベースにMGの大型パーツを組み込んでいく、というスタイルで製作を進めます。
胴体はHG、手足バックパックはMG、頭部は旧キットとそれぞれの優れたポイントを的確に使用することで、大幅に作業量を減らすことができるのです。
複数のスケールを組み合わせる!
先にも書きましたが、「REAL Ex-S」の巨大な肩やビームスマートガンを伝統的な大型化工作で改造するのは大変で、とんでもない時間がかかってしまいます。
こういう部分はワンサイズ大きいスケールのパーツを移植するのが一番。
一瞬で、無改造で手っ取り早く大型化出来ちゃうんです。
特にEx-Sに限らず、武器やバックパックなどは144に100のパーツをつけると簡単にインパクトを強調できるので改造テクニックとしてオススメですよ♪
頭部は旧Ex-Sガンダムのパーツを使う!
頭部はよりセンチネルの連載当時のイメージに近く、サイズが小さく形状の良い旧キットを使います。
ヘルメットは接着面で幅詰めしてさらに小型化し、フェイスも徹底的にシャープ化。
中央の二本のアンテナはセンチネル表紙胸像モデルに合わせ、金属線に変更しています。
100を144に圧縮して密度感UP!
HGのパーツを大型化した場合、どうしてもディテールなどが大雑把になりがちで、間延びしてしまうことが多いんですよね。
大型化したパーツに合わせてディテールを足すのもかなり大変です。
そこでMGのディテールを活かしつつ小型化することにより、ブロック数が多く、非常に密度の濃い144パーツを作ることができるのです。
無いのを作るのは大変ですが、あるのを削るのは簡単ですからね♪
胴体は肩幅は広く、お腹はキュッと!
胴体はHGをベースに、胸を幅増しして大型化しつつ、腹部を大幅に延長しています。
最後の写真を見てもらうとわかるのですが、腹部は極端に細長くないと「REAL Ex-S」のバランスでは大型の腰ビームガンが胴体と干渉してしまうのです。
記事ではより細かな改修ポイントを徹底解説しています。
腕はフレームを利用して長く見せる!
「REAL Ex-S」のビームスマートガンを構えるポーズを再現しようとすると、腕はかなり長くないと保持できません。
MGをベースに、上腕はHGとニコイチして大型化。
前腕は逆に小型化し、内部フレームに隙間を開けつつ長さを伸ばして対応しています。
今回最も悩んだ部分で、かなり反省点が多いですね〜
「REAL Ex-S」のビームスマートガンはこう持て!
REAL Ex-Sのイラストでは、ビームスマートガンにはしっかりと手で上から握って保持している状態になっています。
イラストの持ち位置にしっかりと手を接着し、指を全て切り離して角度をつけて再接着して再現。
どの位置に手を置くかなど、ビームスマートガンを斜め持ちさせる方法を徹底解説しています
ZZ並みの脚部!
脚部はREAL Ex-Sでは非常に太く、ほとんどZZくらいのボリュームが特徴です。
これをHGを大型化して再現するのは非常に大変なので、MGを小型化して使用しています。
これでEx-Sで定番となっている、モモの延長とスネの大型化をしなくてすむわけです。
記事では圧縮ポイントを徹底解説しています。
揚力の発生する「リアル」な翼を作る!
各部のウイングは削り込み、実際に揚力を発生させることができる、本物の航空機と同じ翼断面に整形しています。
ガンダムセンチネルは徹底して「ガンダムのリアル」を追求した企画でしたから、こういった細部のこだわりはしっかりと追求したいポイントですよね♪
バックパックはMGをそのまま使え!
バックパックはMGをそのまま使っています。
イラストを見る限り、これくらい大きくないとあのバランスにはなりません。
ビームガンやスラスターカバーの角度などを変更し、より中心から放射状に広がるような、ケレン味のあるスタイルで仕上げています。
「REAL Ex-S」ポージング徹底解説!
REAL Ex-Sのポーズはイラストならではの二次元的なディフォルメが多く、普通にポーズを再現しようとするとパーツの位置調整に苦労します。
記事では「どのパーツがどの位置にくればこのポーズを再現可能なのか」という、ポーズの三次元的なブロック配置について徹底解説しています。
センチネル風空気遠近法を極める!
塗装ではイラストのオレンジのオーラが全体にかかったような、淡いウォームホワイトを再現するためのフィルタリング方法を調色から徹底解説。
スジボリはフラットブラックでシャープに入れておき、フィルタリングは別に分けることで精密感とボヤけたイメージを両立させることができるのです。
すいません!今回は実力が足りませんでした!
いつも超級技術指南では「やりきった!」という感じがあるのですが、今回は私の実力不足で、どうしても腕が長くなりすぎちゃったんですよね。
「REAL Ex-S」はビームスマートガンの両端近くを手で掴んでいるのですが、二次元の絵の通りに持たせようとするとこれがまた大変なんですよね!
腕のバランス調整にはかなり時間をかけたのですが、それでも完成後「アレ?」となってしまったので…… いや、「REAL Ex-S」の奥は深いです!
作例記事では一回完成させたからこそわかる改善点、反省点も詳しく書いているので、チャレンジする人にとって役立つことは間違いなし!
ぜひ読んでいただけると嬉しいです♪
螺子頭ボンド氏の作例の物凄さについて!
今回REAL Ex-Sを製作してみて、いかにセンチネル掲載の螺子頭ボンド氏の作例が凄かったのかを心の底から理解できました。
あんなすごいモデルを30年前に作るなんて本当にオーパーツです。
昔は「いや、8人がかりで作ってるんだからこれくらい出来ないと」
とか思っていたのですが、いやいや!
複数の人が作ったパーツを短期間にあの形にまとめ、二次元の嘘満載のイラストイメージを損なわないように組み合わせる構成力!
イラストよりもスプリッターのコントラストを控えめにし、赤白青のガンダムカラーながら、現実の航空機のように落ち着いた色味に調整された素晴らしい塗装!
制作中センチネルの作例記事のカラーコピーを貼ってずっと見ていたのですが、見れば見るほど発見があり、伝説作例の凄まじさを改めて認識いたしました。
圧縮モデリングの可能性!
もし、「REAL “Ex-S”」のバランスをMGを大型化して再現した場合、そのボリュームはPGフルアーマーユニコーン並みになるでしょう。
その工作量はとてつもないものになり、プロモデラーでも年単位の製作期間がかかっても不思議ではありません。
ですが、100の本来大きな部分を活かしつつ、他を小型化することでメリハリを強調できる「圧縮モデリング」ならどうでしょうか?
無いものを作るのは大変ですが、あるものから引くのはそれほど難しくなく、大幅に作業時間を短縮できるのです。
この技法は私のオリジナルではなく、かつてセイラマスオ氏がホビージャパンでプロデビューする前、電撃ホビーマガジンに投稿していた144のエルガイムMkⅡの作例を参考したものなのです。
144のエルガイムMkⅡはプロポーションが太ましく、腹部や手足を延長するのが定番工作でした。
しかし、なんとマスオ氏はキットを小型化、圧縮することでベストプロポーションにしていたのです。
これはまさに発想の転換としか言いようがありません。
また、圧縮モデリングの利点として、100だと間延びしているキットでも、144まで縮めれば密度が極めて高くなり、非常に立体映えするということ。
これはリアルMSをSDに縮めた作品を見ると効果をより理解することができます。
理論的にはほとんど全てのガンプラで実現可能なテクニックなので、私もより研究を続けたいと思います。
というわけで林哲平の機動模型超級技術指南第6回「REAL Ex-S GUNDAM」でした♪
超長い記事をここまで読んでいただき、本当にありがとうございます♪
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