こんにちは。林哲平です。
今回は8体目のケルバーダイン、べヴァルジェを紹介します。
ケルバーダインについてはコチラ。
奥さんのお手伝い!
今回のケルバーダインは特別な目的のために制作したため、今までのケルバーダインとは違って明確な芸術的指標を立てて制作したスペシャルバージョンとなっています。
9月2日に開催されるGEISAI#17に奥さんが参加することになりました。
奥さんは伝統的な日本の民芸品「郷土玩具」の復興活動の一貫として、張り子などの郷土玩具を現代風にアレンジ、かつさまざまな「モノ」と融合させた作品を制作する『フォークトイアレンジメント』という活動をしています。
GEISAI♯17に参加することで張り子作家として、そしてアーティストとしてさらなる高みへ駆け上がろうとしている奥さんの姿を見ていると、全力で応援したい気持ちでいっぱいになります。
自分もなにか手伝いたい! と言ったところ、
「フォークトイアレンジメント作品として、張り子を使ってあなたがプロモデラーとして培ってきた技術を詰め込んだ作品を作ってほしい」
との依頼を受けたのです。
こうして作り始めたのがこのケルバーダイン「GKD-08ベヴァルジェ」。
「ベヴァルジェ」という名前は英語で張り子を意味する「paperMarche(ペーパーマルシェ)」をもじって命名しました。
4面図!
ベヴァルジェは全て奥さんの経営する郷土玩具店「はりこのはやしや」商品の試作品や失敗作を組み合わせて制作しています。
6月に制作し、日経MJにも掲載されたバリゴの制作手法をより発展させ、今までのケルバーダインとくらべ二回り以上に巨大な作品となっています。
張り子をノリでつなぎ合わせ、胡粉とニカワを塗り全身を固めるという、古来よりの張り子制作法を忠実に守り組み上げました。
胡粉とニカワは乾燥するとガッチリと硬化するので、100%紙製とはいえ相当に頑丈になりました。
しかも中空でとても軽いので、展示会などへ出品するための持ち運びにも非常に便利です。張り子を作品に取り入れた作家さんが多いのもよく分かりますね。
作品テーマ!
ベヴァルジェのテーマは「失われてしまった郷土玩具たちの怨念」です。
郷土玩具というものは個人や家単位の家内制手工業として作られていたものがほとんでした。木製、紙製のものも多く、第二次世界大戦の戦禍の中で多くの郷土玩具が伝統の職人ごと焼きつくされました。
そして戦後の高度経済成長期。合理化や大量生産の効率化が台頭する中、郷土玩具は後継者を失い次々と廃絶していったのです。
今日まで生き残っている郷土玩具職人もその殆どが高齢で、後継者もほとんどいません。
いま、そこにある、現在進行形での「文化の絶滅」なのです。
可愛らしく、温かみのある郷土玩具ですが、その中には廃絶や消失で失われていってしまったものたちの怨念が詰まっていると私は考えています。
頭部の構成!
ベヴァルジェの頭部から尻尾にかけては、蛇をイメージした形状にまとめてあります。
蛇は古来より、神聖さと邪悪さが同居する特別な生き物と考えられていました。
そして大変執念深い、粗末に扱うと怨念を込めて人を呪う存在として過去さまざまな神話、物語に描かれています。
「蛇の呪い」にちなんだ話を効いたことの無い人はいないと思います。
ベヴァルジェはただの作品ではなく、「怨念の篭った呪物」として郷土玩具たちが集合したもの。怨念をより増幅する意味を込めて蛇の意匠を取り入れているのです。
右腕の構成!
右腕には巨大な大砲を備え付けました。当然のことながら砲身も全て紙製です。
戦禍によって多くが失われてしまった郷土玩具。今は郷土玩具たちが銃となり、かつて自分たちを消し去ったものへと復讐するために武器を持ち、襲いかかるのです。
怨念の篭った銃弾を受けたものは、失われてしまったものたちの思いの深さを身を持って知ることになるでしょう。
続いては塗装した完成状態を紹介したいと思っています。「失われてしまった郷土玩具たちの怨念」をプロモデラーとしてどう再現するか?
難しいテーマですが、チャレンジしたいと思います。
次回は完成編です!
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