こんにちは!プロモデラー林哲平です!
今回は映画「ALIEN3」に登場するエイリアンの幼体、ドッグバスターのソフビキットの製作レポートです♪
このドッグバスターは2012年に製作したもので、過去のブログ記事をまとめてリライトしたのですが、昔の自分の気合の入りっぷりを見るとエイリアン欲がまた湧き上がってきますね!
それではドッグバスター、いってみましょう!
念願のヘルシオン1/1ドッグバスターソフビキットを購入&レビュー!(2012/5/12)
こんにちは。林哲平です。
今回は1992年発売のソフビ製ガレージキット、英国HALCYON(ヘルシオン)社MovieClassicsシリーズより1:1ドッグバスターを紹介します。
ドッグバスターは映画『ALIEN3』に登場するエイリアンの幼生体です。
エイリアンの幼生体はフェイスハガーと呼ばれるクモのような寄生体に卵を産み付けられた人間の胸を突き破って誕生することからチェストバスターと名付けられているのですが、ドッグバスターはその名の通り犬を宿主として誕生したエイリアンなのです。
映画だと犬がバラバラになる勢いで誕生するので正直怖いです。
ちなみに2004年に公開された『ALIEN3完全版』ではなんと牛から生まれます。
なんでも元々の原案だと牛から生まれる予定だったとか。
それだとカウバスターじゃないか……と見てびっくりしたのをよく憶えています。
このドッグバスターのキットには個人的に思い入れがありまして。
私が小学4年生の頃、2冊目に買ったホビージャパン92年7月号がエイリアン大特集号でした。
近所のおもちゃ屋には絶対に売っていないようなガレージキット作例の嵐に当時の自分は夢中になり、本がボロボロになるまで何度も何度も読み返したものです。
あの頃のホビージャパンからはガンプラやスケールモデル以外でも模型ってあるんだ! と模型の奥深さをよく学んだ気がします。
というわけで小学生の自分は特集に使われていたキットが欲しくて欲しくてたまらなかったのですが、さすがに小学生の小遣いでは買うことが出来ず、遠い世界のことだと諦めて涙を飲んだのです。
しかし! 進学のため上京してから少しずつ中古模型屋などで当時のエイリアンキットを買いあさり、エイリアン特集号で使われていたキットを集め、いよいよコンプリートか! というところで海洋堂のクイーンエイリアンとこのドッグバスターのキットだけが手に入らず、いつしかエイリアンキット探しからも遠ざかっていたのです。
そんなある日。仕事用の素材調達に秋葉原へ行ったのですが、たまたま寄った模型店レオナルドの片隅にポンッ! と置かれているではないですか!!!
もちろん即座に購入です。ちなみに価格は4500円。
発売当時の定価が6000円なのでそれを考えるとだいぶんお安くお得でした。
キットはソフトビニール製で、11パーツで構成されています。
スケールは1:1とダンボール戦機を先取りしていますが、これは映画の撮影用に使われたプロップを直接型取りして商品化しているため。
まさに本物のドッグバスターなのです。
頭部パーツ。
チェストバスターにくらべるとのっぺりしていて可愛い感じがしますね。口の中も精密に再現されています。
尻尾パーツ。
節ごとに細かいディテールが入っています。
足首パーツ。
筋肉や皮膚のシワの再現度もバッチリ! さすが本物を型取りしたキットですね。
さっそくホビージャパン92年7月号を読みながら製作に入りたいと思います。
思えばエイリアンキットは沢山持っていますが、完成したのはドッグバスターと同じヘルシオン社製の1:5初代エイリアンしかないので頑張って完成させてやりたいです。
大きくて迫力満点の模型なので完成したら玄関に飾ります。
奥さんの許可が得られたらですけどね~
ドッグバスター製作途中写真!(2012/5/26)
こんにちは。林哲平です。
ドッグバスターが塗装直前状態にまで仕上がりました♪
さすが1:1!!! 組み上げると迫力抜群です。
大きな模型はその大きさだけでもとことん目立つのでいいですね~
そのまま製作しても十分な出来栄えのキットだとは思うのですが、自分の中でドッグバスターといえばホビージャパン92年7月号に掲載された韮沢靖氏製作のドッグバスターがレジェンドなので、その製作記事を読みつつ、当時の作例に合わせて工作しました。
【4面図】
キットのそのままのポーズでは少々大人しすぎるので、肉食獣が獲物に飛びかかる一歩手前のような躍動感あるポーズへと変更しました。
韮沢氏の作例よりも気持ち腰の位置を高く上げています。なお、キットをそのまま組み立てるとパッケージ画像そのままのポーズになります。
パーツの接着には瞬間接着剤を使用しています。
ソフビは瞬間接着剤で接着すると相当に力をかけても外れないぐらいガッチリ接着されるので、ソフビキットを製作するときは瞬間接着剤を使いましょう。
【脚部の補強とポーズ変更】
軽く、組み立てやすいのが魅力のソフビキットですが、夏になり気温が上がると自重に耐えられず変形してしまうという弱点があります。
特にドッグバスターの脚のように細く重量のかかるパーツだとなおさらです。ここは内部にレジンを流し込み、補強としました。
で、レジンは硬化するときソフビが柔らかくなるくらいに硬化熱を発するので、その間に関節をグニャリ! と曲げてポーズを付けます。かなり熱くなるので、手袋を付けて作業しました。
【尻尾】
尻尾も脚部と同様にレジンを流し込み、うねりを加えています。
エイリアン3のエイリアンは尻尾でのアクションが特徴なので、尻尾で動きを出すのは外せません。
ちなみに曲げすぎて一度折ってしまったので接着しなおして修復しております。ソフビでも折れることってあるんですね~
【関節部】
ポーズ変更に伴い各関節部には隙間が開くのでタミヤエポキシパテ高密度タイプを詰め込み、スパチュラでそれらしくシワや筋肉の流れをディテーリングしています。
こういった作業には粘りがが強く伸びの良いエポパテがオススメ。
軽量タイプのエポパテは表面が荒れやすいのでこういったクリーチャー表現には向いていないのです。
【頭部】
頭部の後端は別パーツになっているので、エポパテで段差を埋めてスパチュラでディテールを掘込み、合わせ目を消しています。
こういう筋状のディテールを刻むときは、スパチュラの先端にメンソレータムを塗っておくとエポパテがスパチュラにひっつかずスムーズに作業を進めることができます。
【首】
ポーズを変更したため、そのままでは首が下向きの角度についてしまい地面の上のエサを一生懸命探している犬みたいになってしまいます。
なので顔が正面に来るように首の角度を変え、足りない部分をエポパテで自作しました。
首は大きく重いパーツなので、強度を考え内部には3mmシンチュウ線を通して補強してあります。完成後いきなり首が落ちたりしたらホラーですからね。
【ベース】
韮沢氏の作例通り、ベニヤ板に東急ハンズで購入した太巻きの0.3mm鉛シートを貼って製作。
貼りつけには愛用の両面テープ、ナイスタック強力タイプを使用しています。お手軽に金属風のベースを完成させることができました。
次回は完成編です。クリーチャーを塗るのは久しぶりなので楽しみですね。さ、Vカラーを買いにいかないと♪
ドッグバスター完成!(2012/6/16)
こんにちは。林哲平です。ドッグバスターが完成しました♪
全長42cm、全高32cmというビッグサイズ。
全身を覆う緻密な生物的ディテール。
そして躍動感あふれるポージングにより、満足のゆく作品となりました。
完成編では、塗装テクニックと細部の写真を詳しく紹介していきます。
【塗装】
今回メインに使用した塗料は以下の4種類。
ソフビキットの塗装にはVカラーが最適です。
そもそもVカラーはソフビキットの塗装するために開発された塗料。
塗料自体に柔軟性があり、完成後に部品を曲げたりしてもひび割れたりすることが少ないのです。塗料の乾燥も早く、手早い作業を行うことができます。
まず全身にフレッシュBを吹き、ポアーステインのマホガニーブラウンで強めにウォッシングします。
ウォッシングは本来なら発色と伸びが良く、ラッカー系塗料の下地を侵さず拭き取りができるエナメル系塗料で行うのがベストです。
しかし、ソフビキットにエナメル塗料でべったりと塗装するとソフビとエナメル溶剤が反応し、塗料が乾かずいつまでたってもベタベタのままという最悪の事態が発生します。
昔の自分はこのことを知らずソフビキットのビッグチャップ(エイリアン1に登場するエイリアンの俗称)をエナメルでウォッシングしてしまい、半年以上ベタるという悲劇を味わいました。
エイリアンの表面がベタベタするのはある意味リアルかもしれませんが、模型ではちょっと困ります。
ポアーステインはホームセンターなどで販売されている水性の木彫用途良で、本来は木目を際立たせる目的で使います。
水性で乾燥までに少し時間がかかるので、水をふくませたティッシュなどでふきとりながら作業すれば、色の濃度を簡単に調整できます。
ドッグバスターは細かなディテールが多いので、関節の隙間やヒダの奥など、全身の隅々までポアーステインを流し込みました。
ウォッシングが終わったら、エナメルのフラットフレッシュを全体にドライブラシします。表面に彫刻されている筋やヒダなどの生物ディテールを浮き上がらせるため、派手目にドライブラシしていきます。
上にも書いた通り、エナメル塗料はソフビキットには向きません。
しかし、溶剤成分をほとんど使わないドライブラシならば完成後もベタつかず問題なく作業できます。
どうしても気になるという人は油絵の具でドライブラシしましょう。
最後にエナメル塗料のホワイトで歯をドライブラシ。
これにて完成です。
【四面図】
チェストバスターやフェイスハガーと並ぶ、皮を剥がれた筋肉むき出しの生肉のような表面、背中から尻尾にかけてのゴツゴツして突き出した背骨、頭部や股間に見られる男性器を模したデザインが異彩を放っています。
エイリアンのデザイナーであるHRギーガー氏は作品のモチーフとして、機械と融合した生物、性器、骨をデザインの中に取り入れることで有名です。
ギーガー氏の作品は濃い白黒の濃淡をつけたモノトーンの色調が特徴なので、ドッグバスターも白黒で塗装し、「ギーガー・デザイナーズカラー」風の作品として仕上げるのも面白いかもしれません。
【頭部】
ぽっこりと膨らんだ形が特徴の頭部。ドッグバスターではひび割れた血管のような筋が入っていますが、生体になるとこの部分は滑らかな質感の透明フードになります。
首の付け根は男性器の亀頭裏側を模したデザインとなっています。この生々しさもエイリアンの魅力。
エイリアン2のエイリアン・ウォーリアーの頭部なんてもうそのまま男性器ですし。
それにくらべればドッグバスターはまだまだ大人しい部類なのかもしれません。
口部アップ。エイリアンの特徴であるヤゴのような二重アゴも奥にしっかりモールドされています。
逆テーパーが得意なソフビキットとはいえ、歯やアゴを別パーツ化せず一発で抜いているのは見事! モデラーとしては、こういった「すごい成型のパーツ」を見ると嬉しくなってきますね。
首はエポパテで自作した部分です。
塗装により周りのパーツと馴染み、違和感無く仕上げることができました。
【背部】
背骨と肋骨状の筋肉のうねりが特徴的です。
むき出しの骸骨のような尻尾には、こまかなディテールが深く彫り込まれている部分。
尻尾は特別強めにウォッシングし、ドライブラシしてメリハリをつけています。
尻尾先端アップ。
成体になるとこの部分で人間を串刺しにしたりする凶悪な部分なのですが、ドッグバスターの段階では刺というよりも魚のヒレのような形状をしています。
【脚部】
細長く、しなやかな脚部。
犬というよりも、生まれたての子牛のような形状をしています。これはレビュー記事で書いた通り、エイリアン3の原案では犬ではなく牛から生まれる「バンビ・エイリアン」としてデザインされたため。
弱々しく立ち上がる、生まれたての子牛の脚だと考えると納得のゆく形状だと思います。
流れるような筋肉状のディテールと、ゴツゴツした腰骨のような形状が特徴的な関節部分。ウォッシングとドライブラシが映えるポイントです。
ディテールの集中する足首。
人間の指のような形状が気持ち悪くもありつつ、また興味深い部分です
【ネームプレート】
自分としては珍しくベースまで作ったので、ついでにネームプレートを制作してみました。
まず亜鉛板にインレタで文字を貼り付け、金属版画用のエッチング液に浸して腐食させます。
しばらく待ち表面が腐食してきたら、水洗いしてインレタを剥がし完成です。
『エイリアン3』の薄汚れた宇宙刑務所をイメージし、表面を強くサビさせています。文字も少し歪ませたり欠けさせたりして荒廃した雰囲気を演出してみました。
小学生のとき憧れた小さな夢に、無事決着をつけることができた感じがします。
思えば私がエイリアンキットを集めるきっかけとなった、ホビージャパン1992年7月号が発刊されたのが今からぴったり20年前。
まさか20年後に自分が憧れていた雑誌で仕事をし、おまけにお金も無く、物理的な距離により手に入れることすら難しかったドッグバスターを趣味で制作することになるなんて夢にも思っていませんでした。
もしデロリアンで過去に戻り、小学生の自分にこのことを話しても絶対に信じないと思います。迷わず警察に「変質者が出た!!」と通報しますね。
幸い奥さんも「これは格好いいね♪」と気に入ってもらえたので、さっそく玄関に置いたのですが……
宅急便のおじさんにめちゃめちゃびっくりされたので、泣く泣く本棚の上に待機してもらっています。
番犬にするには、ちょっとインパクトが強すぎたのかもしれませんね。
エイリアンキットは素晴らしい!
というわけでヘルシオン1/1ドッグバスターでした♪
ちなみに私が参考にしたホビージャパン1992年7月号はこんな感じ。
この記事書くたびに久々に引っ張り出してきましたが、やっぱり昔のホビージャパンていいですよね〜♪
最近ではすっかりエイリアンの立体物は完成品ばかりとなっていますが、昔はプラモデルやガレージキットもすっごくたくさん発売されていたんです。
そしてどれも味があって、作ると面白いんですよ♪
中古プラモデル屋やネットオークションなどで見かけたとき、ちょっと気になるな〜って少しでも感じたらぜひ手にとってみてください♪
心の中にチェストバスターが取り付くこと間違いなしです!
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