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塗れない?いや、塗れる!プラモデルの関節に使われるPOM(ポリアセタール樹脂)パーツを塗装可能にする「焼付け塗装」について。オーブンで焼く温度と時間、レシピをしっかり守れば誰でも出来ます!

こんにちは。プロモデラー林哲平です。

その耐久性により近年プラモデルの関節への採用が増えているPOM(ポリアセタール)樹脂 。

しかし、塗料が定着しないため塗装派のモデラーにとっては悩みの種となっているんですね。

今回はそんなPOM樹脂を塗装可能とする、オーブンを使った「焼付け塗装」について解説します。

目次

POM(ポリアセタール)樹脂とは?

POM樹脂はエンジニアリングプラスチックと呼ばれる耐熱・耐摩耗性に優れたプラスチックです。

どちらかというと、ジュラコンという商品名のほうが定着しています。

元々は摩耗や熱が加わりやすい機械の歯車などに使われていたのですが、同様にブンドドや変形でハードな負荷がかかりがちなプラモデルの可動部にも近年採用率が急上昇しているのです。

ものづくり情報サイト「I-MAKER」
ポリアセタール(POM)の特性と用途 高い耐磨耗性を活かしたエンプラ ポリアセタール(POM)は、エンジニアリング・プラスチックとして高い耐磨耗性と強度といった強い特性を持ち、金属の代替品として、機能性が必要なパーツに使用されていま...

POMは強度抜群な反面、接着や塗装が難しい素材です。

普通にプラモデル用の塗料を塗るだけでは上に乗っかっているだけで定着しておらず、ちょっとひっかくとすぐに剥がれてしまいます。

そして、塗りにくい素材の塗装を定着しやすくしてくれるプライマーも通用しません。

私も最初は「いや、ABSと同じで塗れないって言われすぎぐらいでしょ♪」とプラモデル用プライマーや私の知っている限り最強の下地プライマーであるホルツのバンパープライマーを塗って塗装してみたのですが、もうちょっと引っ掻いただけでペリペリ剥がれる!

採用頻度の高い関節部は得に外装と擦れやすい部分ですから、塗って仕上げたい人には悩みの種だったのですが……!

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なんと! 特定のサーフェイサーを吹き、オーブンで熱してパーツに「焼き付ける」ことで通常のラッカー系塗料で作った塗膜並みの強度で塗装することができるのです!

それでは焼付け塗装行ってみましょう♪

余りパーツやランナーでの耐熱試験を忘れずに!

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焼付け塗装する前は必ずランナーや余りパーツで試してみてからにしてください!

メーカーによってPOMの組成は変わりますので、どれぐらいの熱で歪むかあらかじめ実験して、パーツの耐熱性を確かめておいてから本番に移りましょう。

幸い、今回焼付けしたフロントミッションストラクチャーアーツは余りPOMパーツが多いので、実験には困りません♪

※超重要 「必ず」タミヤスーパーサーフェイサーを吹き付ける!

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これは非常に重要な大前提なのですが、POM焼付け塗装にはタミヤのスーパーサーフェイサーが絶対に必要です。

焼付けしたいパーツの全体に吹き付けましょう。

私も最初は「いや、そんなそんな、他のサーフェイサーでも大丈夫でしょw」 と、他のサーフェイサーでもいろいろ試してみたのですが……同じ条件でも焼付しても塗膜が定着せず、剥がれてしまいました 。

これはスーパーサーフェイサーに入っているプライマーが塗料定着のポイントになっていると考えられます。

「よし!プライマーが重要なら下地にバンパープライマーを吹いてサフを吹いて塗装すればOK!」

と、超強力なプライマー吹いて別のサフを吹き、焼付けしたら……やはり剥がれちゃうんですよね。

「よし!ならスーパーサーフェイサーにラッカー系塗料を混ぜてカラーサフを使って焼付ければ塗装の手間も……」

と試してみたらこれもダメでした。

現状、私の手元にある塗料でいろいろ試してみましたが、スーパーサーフェイサー以外の塗料で焼付けは成功しませんでした。

今後研究が進めば他の塗料でもできるようになるかもしれませんが、とりあえず現状でやってみたい人は必ずタミヤのスーパーサーフェイサー混ぜものせずピュアな状態で使うようにしてくださいね。

オーブンで焼く!

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オーブンで焼くため、持ち手が木やプラスチックだと燃えてしまいます 。

パーツは金属製のクリップで保持しておきましょう 。

……ただ、焼いてる途中にクリップから外れたパーツもしっかり焼付けできていたので、耐熱皿にそのままゴロゴロと置くだけでOKなのかもしれません 。

このあたりはより効率的な方法を研究したいところです。

焼く温度は「120度」!焼く時間は「20分」!

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POM樹脂は150度まで耐熱可能とされています 。

オーブンで120度、20分間加熱しましょう。

「150度までOKならもうちょい温度高いほうがガッチリ塗膜が定着するかも?と130度で加熱したらちょっと歪んでしまったので、120度20分は守るようにしておきましょう。

オーブンは設定温度に常にピッタリ保たれているわけではなく、120度なら110〜130度あたりをいったり来たりして平均120度をキープしているので、130みたいなちょっぴり高めの温度設定にしてしまうと一時的に150度以上になり、POMの耐熱限界を超えてしまうんですね。

こちらのしぐまん氏の解説が非常にわかりやすいので、ぜひ一読してみてください♪

POMを焼いても嫌な匂いは出ないの?

プラスチックを熱すると有害で嫌〜な匂いのするガスが発生するのはご存知の通り。

POMとか料理で使うオーブンで焼いて大丈夫なんだろうか?と多くの人が気になると思いますが、120度、130度で焼いてみたところでは匂いは一切発生しませんでした。

さすがPOM、耐熱性にも優れているだけありますね!

焼付け完了!塗膜の強度もバッチリだ!

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オーブンから取り出したら焼付け完了です!

焼付け前の塗装では上の写真のようにツメで軽くこすっただけで塗料が剥がれていましたが、焼付け後はラッカー系塗料で普通にプラモデルを塗装したぐらいの塗膜強度となり、ツメでこすったぐらいで塗膜が剥がれることはありません。

この上からラッカー系塗料で塗装すれば、普通のプラスチック同様に塗装可能となります。

合わせ目が発生するPOMパーツを焼き付け処理する!

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POMで成形されたパーツで最も悩むのがはめ合わせの真ん中に合わせ目が来る場合です。

接着しにくい素材ですが、接着面を紙ヤスリで荒らしておき、瞬間接着剤とMr瞬間接着パテを使えばなんとか合わせ目を消すことも可能です。

表面のヤスリ傷に無理やり瞬間接着剤を固着させる、という力技ですね(笑)

なお、 超硬いので、パーティングラインはキサゲでゴリゴリ削ると楽です。

POMはとにかく固いので、金属よりも硬度の高い、セラミック性のキサゲを使うほうが効率的に削れるかもしれません。

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合わせ目のある関節は組み立てたまま塗装して焼付けます。

最初バラしてから130度で焼付けしたところ、温度が高かったせいもあり歪んでしまったんですよね(涙)

組み立てたまま焼き付けても、特にパーツ同士が融着することはなく、焼付後も普通に可動させることができました♪

実際に焼き付け塗装したパーツを組み込んだらこうなります!

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焼付け後に塗装したパーツをキットに組み込んだ状態。

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POM焼付けの上から塗装していますが、この通り色ハゲを防止しつつ、動かして遊ぶことが可能となりました。

最初、ガストは固定のヴィネットで仕上げようと思っていたのですが、どうしても関節を可動させて降着させたかったのでPOMの焼付け塗装をしてみようと思ったんですよね♪

ネット上のみなさまのお知恵を拝借させていただきました!

この焼付け塗装ですが、ネットで詳しく解説されている多くのモデラーさんの記事を参考にさせていただきました 。

ここからは私が参考にした記事を紹介させていただきます。 正直、私の記事よりもはるかに詳しく、わかりやすいです♪

@raccoon81920 氏によるPOM焼付け塗装の記事!

@raccoon81920 氏によるPOM焼付け塗装の記事。

耐熱実験や温度や塗膜、塗装の検証など最も参考にさせていただきました。

この記事を読んでおけば、POM焼付け塗装の実践はほぼ問題ないのではないでしょうか?

素晴らしいHOWTO記事です!

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NAOKI氏によるドライヤーを使ったPOM焼付け塗装の記事!

NAOKI氏によるドライヤーを使ったPOM焼付け塗装の記事 。

この方法であれば、うっかり焼きすぎてパーツを変形させるリスク無く焼付け可能となるので、オーブンを使う方法よりもより安全でとっつきやすいと思います。

POM焼付け塗装は25年以上前から存在した!

POM焼付け塗装の原点はどこから来ているのか?と調べてみたところ、こちらの「河南車両製造・Dr.Henkenのページ」のコラム記事に鉄道模型趣味1997年12月号にて紹介されている旨が紹介されており、模型技法としては25年以上前から存在していたことに驚きました。 さすが鉄道模型、ホビーの王者だけあります!

http://studio-owada.lolipop.jp/henken/column.htm

なぜPOMは焼付けで塗膜が定着するのか?

ところで、この焼付け塗装ですが私はどうして熱すれば塗膜が剥がれなくなるのかいろいろ調べたのですがよくわかりませんでした 。

そこで、ツイッターで質問してみたところ……

しぐまん氏に教えていただき、やっとなんとなく私もわかってきました!

通常、ラッカー系塗料は表面のプラをわずかに溶かし、溶剤の揮発によりつなぎのクリアー質が凝固し定着します。

POMは耐熱性以外にも対薬剤性も強く、溶剤で表面が溶けにくいためただ溶剤が揮発して乾燥するだけでは塗料は定着しません。

焼付けすることにより、塗膜自体が熱で化学変化を起こし塗料の分子自体の結合がより強固になり、その強固な塗膜でPOM全体を包み込むことで塗膜の剥がれを防いでいるのではないか? と考えられます。

なお、今回私はやっていないのですが、より強固な塗膜を得たいなら、スーパーサーフェイサーを焼き付けしたあとラッカー系塗料で塗装し、もう一度焼き付けすることで最後に塗装したラッカー塗膜をより強固に固着させることが可能……らしいです。

もし、次POM関節のキットを作ることがあれば、それで実験して検証してみたいと思います。

POMは塗れる!

プラモデルの関節は強度が必要になるため、ABSやポリ、そして今回のPOMなど特殊素材が使われることが多く、そのたび我々全塗装派のモデラーは頭を悩ませてきました。

最近はガールズモデルのような細い関節軸を多用するキットや、組み立てるアクションフィギュア的な要素の強いキットが増加しており、POMPOMさんと遭遇する機会はより増えるでしょう。

ただ、実際やってみたところ焼付けは「スーパーサーフェイサーを使い、温度と時間を守る」ことさえすればまったく難しくありません。

というわけでPOM焼付け塗装でした!

成型色を活かすだけでは満足できない! という塗装派のモデラーさんに焼き付け塗装のテクを活かしていただければ幸いです♪

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この記事を書いた人

 こんにちは! プロモデラー林哲平と申します。

 2005年より模型専門誌ホビージャパンの編集部に在籍。

 趣味、仕事合わせて3000体以上のプラモデルを組み立てた経験を活かし、プラモの楽しさをみんなに伝えたい!と実体験から得た製作テクニックなどを日々発信しています。
 

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