こんにちは!プロモデラー林哲平です
武者や騎士系のSDガンダムって、金の縁取りに黒、黒の中に金の鋲……と、塗り分けが極めて複雑ですよね
マスキングテープを細切りにして貼って、はみ出して、直して……で心が折れた人、多いんじゃないでしょうか
そんな極めて複雑な塗り分けを、マスキング無しで簡単に塗装できるのが、ラッカー系塗料×水性エマルション系塗料による「ツマヨウジ落とし」です
今回は月刊ホビージャパン2026年9月号で制作したSDW HEROES 78代目武者頑駄無の兜を例に、その方法を徹底解説します
「水性エマルション系塗料」ってどれのこと?
先に言葉の整理を
この記事で「水性エマルション系塗料」と呼んでいるのは、ファレホ、シタデルカラー、アーミーペインターなどの海外製水性塗料のこと
水性ホビーカラーやタミヤアクリルのような「水性アクリル系塗料」とは、同じ水性でも塗膜の性質がまったく違います
水性エマルション系塗料は、系統としては水性アクリル絵の具に近いもの
塗膜が弱く、ラッカー系塗料の上に「乗っかっているだけ」の状態になる。この性質が今回の技法の肝になります
塗料の仕組みそのものが気になる人は、こちらの記事で徹底解説しています

下地に塗膜の強いラッカー系塗料を塗る

まずは下地
エアブラシでも筆でも缶スプレーでもいいですが、下地に塗るラッカー系塗料は塗膜が光沢で仕上がるようにしてください
つや消しだと後の作業で落としにくくなります
今回はガイアカラーのエルドランゴールドを使っています
SDの武者や騎士特有のゴールドのふちどりは大変目立つポイント
このようにエアブラシや缶スプレーで最初に一気に塗ってしまえば、最も重要な部分を塗りムラなどもなく美しく仕上げることができるのです
塗り分け部分に水性エマルション系塗料を塗る

今回塗るのは兜の後部。黒の中に丸い金の鋲が何十個も打たれているという、本キットでも屈指の塗装難度を誇る部分です
ここに水性エマルション系塗料を筆塗りします
今回は高性能なアーミーペインターのマットブラックを使用しましたが、入手しやすいファレホやシタデルでも大丈夫
水で薄め、乾燥させながら3回ほど塗り重ねます
鋲に多少はみ出しても、というより鋲ごと塗りつぶしてしまって大丈夫
水性エマルション系塗料は、下地のラッカー系塗料の塗膜を侵すことはありません
乾燥が大変早いため、こまめに筆を洗って、固まってしまわないように注意してください
ただし注意点がひとつ
塗膜の食いつきには塗料の銘柄ごと、種類ごとで差があるので、必ず落とせるかテストしてから実際の塗装に入ってください
ツマヨウジでこそぎ落とす

ここが本番
水性エマルション系塗料は塗膜が弱いため、ラッカー系塗料の上に乗っているだけ
なので鋲に被った塗料をツマヨウジの先端でこそぎ落とせば、簡単に下地の金が顔を出します
ツマヨウジは木製でほどよく硬く、柔らかく、プラを傷つけにくいので落とし作業には最適なんです
より細かい部分を落として調整したいときは、デザインナイフでツマヨウジの先端を細く削って使ってくださいね
これもラッカー系塗料を侵さないため、キレイに下地のみを露出させることができるのです
これで塗り分けの完成となります
兜ひとつで約40分。マスキングなら5時間

兜の完成状態
この金色の鋲と黒い下地の塗り分けにかかった時間はだいたい40分くらい
これがオールラッカーのマスキング塗装であれば、修正含めてこのパーツだけで5時間かかっていても不思議ではありません
作業時間の短縮と、仕上がりの美しさも両立させることができるのです
「マジックリン拭き取り」との使い分け
ところで、この兜の前部の白い部分は、実はツマヨウジ落としでは塗っていません
こちらは水性ホビーカラーのつや消しホワイトを塗って、はみ出しを強アルカリ系洗剤(マジックリンなど)を染み込ませた綿棒やフィニッシュマスターなどで拭き取る方法です
ラッカー系塗料×水性アクリル系塗料の、私がずっと使ってきた塗り分け法ですね
じゃあ、なぜ後部の黒は洗剤で拭き取らなかったのか?
水性ホビーカラーは塗膜が強いため、このような小さな丸を、ピンポイントで何十個もキレイに拭き取る、というのは現実的ではないからです
マジックリンを綿棒などに染み込ませて拭き取る場合、乾燥が進みすぎていると水性アクリル系塗料の塗膜が強すぎて拭き取るのが大変すぎたり、溶剤がはみ出して必要部分まで拭き取ってしまうことがありました
しかし、水性エマルション系塗料でこそぎ落とす方法であれば溶剤を使わないため、複雑で拭き取りが難しい部分でも楽に彩色を再現することができるのです
面積が広くてフチが一本線なら洗剤拭き取り、鋲のような細かいディテールが何十個もあるならツマヨウジ落とし
場所によって塗料の特性を使い分けるといいですよ

弱点:水性エマルション系塗料の塗膜の弱さをリカバーする
もちろん、弱点もあります
水性エマルション系塗料はツマヨウジで落とせるほど塗膜が弱いため、干渉する部分や、よく触れる部分などはすぐに塗膜が剥げてしまいます
この塗膜の弱さに関しては、GSIクレオスのプレミアムトップコートシリーズでオーバーコートすれば解決します
水性ですので、水性エマルション系塗料の保護には相性抜群なんです
今回制作した78代目武者頑駄無では、メタリックの金属感とそれ以外のつや消し部分とを対比させたかったので、あえてオーバーコートはしていません
水性エマルション系塗料は筆ムラなども出にくいので、剥がれたら即リタッチしてリカバリーするのも効果的です
水で薄められる手軽さゆえ、リタッチ作業も一瞬で終わります
もうひとつ、スミ入れの注意
水性エマルション系塗料は塗膜が弱いため、通常のスミ入れでお馴染みの拭き取りは向いていません
私はコピックマルチライナー003でディテールに沿ってラインを引き、はみ出した部分は下地色をリタッチしています
大変細い線が引けるので、スジ彫りをタガネで彫り直したかのようなスミ入れになりますよ
複雑な塗り分けに悩んでいる人は試してみてください!
というわけで、ラッカー系塗料×水性エマルション系塗料の「ツマヨウジ落とし」でした
武者、騎士系のSDガンダムなど、極めて複雑な塗り分けが必要となるプラモデルに効果的ですので、ぜひ!試してみてくださいね😁
「このプラモ、塗り分け多すぎだし・・・」と諦めて押し入れに積んでいる人は、ぜひ、水性エマルション系塗料とツマヨウジを用意してみてください

この技法で作った作例:SDW HEROES 78代目武者頑駄無

今回のツマヨウジ落としは、月刊ホビージャパン2026年9月号の特集「塗装の王道!”ラッカー塗料”を極める!!」で制作した、SDW HEROES 78代目武者頑駄無の作例で使った技法です
塗膜の強いラッカー系塗料をベースに、出来うる限りリカバリー重視、難しいテクニック不要で、楽しく塗装する方法として制作しました

隠密ガンダムエアリアルの眼帯と綺羅鋼を流用して、BB戦士No.47 農丸頑駄無風の塗り分けにも変更しています
作例全体の制作記事は別途公開予定です
もっと塗装テクニックを知りたい人へ
塗り分け・筆塗り・エアブラシの基礎から応用まで、私の塗装テクニックは「ガンプラ凄技テクニック」シリーズにまとめています
今回のような塗装メインのテクニックは「週末でつくるガンプラ凄技テクニック HG編」がおすすめです
林哲平の書籍一覧はこちらのページにまとめています



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