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軍用車がキレイでもいいじゃない!クリーンフィニッシュでカーモデル風に仕上げる。タミヤ1/35 シュタイヤー1500Aコマンドワーゲン

こんにちは!プロモデラー林哲平です

今回はタミヤの1/35シュタイヤー1500Aコマンドワーゲンを制作したので紹介します♪

目次

戦場の高級車、シュタイヤー1500Aコマンドワーゲン

GERMAN TANKS AND MILITARY VEHICLES OF THE SECOND WORLD WAR (STT 6989) Steyr-Daimler staff car Copyright: © IWM. Original Source: http://www.iwm.org.uk/collections/item/object/205095118

シュタイヤー1500Aコマンドワーゲンは1942年からオーストリアのシュタイア・ヴェルケ・アーゲー社により生産された軍用車です

この「シュタイヤー」というのはオーストリアの州の名前で、ここを本拠にするシュタイヤーグループはシュタイア・プフ社として現在でも存続しています。インパクトの強い形状で有名なサブマシンガン、ステアーAUGの「Steyr」も「シュタイヤー」の読み方違いで、これを開発したのははシュタイア・プフ社の軍事部門なのです。

今ではベンツGクラスとしてすっかり馴染みのある「ゲレンデワーゲン」もシュタイア・プフ社が元々西ドイツ軍用に開発した軍用車ですし、大変美しい町並みでもシュタイヤー地方は、ハードな軍需産業の街でもあるのです

1938年にオーストリアがドイツに併合されると、第二次大戦を控えたドイツはシュタイヤー社に軍用トラックの制作を命じます。これがシュタイヤー1500として大戦を通じ、どころか戦後まで活躍することになるのですが、今回の主役、コマンドワーゲンは普通のトラック型とは一味違ったスペシャルバージョンなのですよ!

第二次大戦時、将校や兵士を運搬する車輌、いわゆる「スタッフカー」が各地で使われましたが、その多くはシブい色で塗られ、ライトやタイヤを交換した当時の民間車でした

ただ、軍の偉い人、高級将校はスタッフカーにも高級車を使う人もいました

ベンツやパッカードなどなど、当時の名だたる高級車がスタッフカーとして使われたのです

このコマンドワーゲンもいわゆるスタッフカーの仲間なのですが、民間車からの流用ではなく、軍用に設計されたシュタイヤー1500Aのシャシーに、当時世界的に有名だったコーチビルダー、ブリエ・カロッセリー GmbHが制作したボディを架装したものなんです

ブリエ・カロッセリー GmbH社はドイツのメーカーで、美しいスタイルのボディが高く評価され、当時のアメリカ車にも影響を与えたとされるくらい、名門のメーカーでした

ただ、戦時体制では兵器の生産に工業力は全振りされ、高級車の注文はストップしてしまいます

ブリエ・カロッセリー GmbH社は戦時中はキューベルワーゲンのボディやMe262のエンジンナセルを作っていたようなのですが

きっと、本当は高級車を作りたかったんでしょうね

コマンドワーゲンは正面こそシュタイヤー1500そのままですが、タイヤを完全に密閉して収める空力を意識したトランクルームや、全体的に柔らかなラインなど

たとえベースが軍用車だったとしても、コーチビルダーとしての本気を見せる「これがやりたかったんや!」といったスタイルが魅力の一台なんです

プラモ組み立て会用に購入!

昨年、川越市のローカルラジオ局「ラジオ川越」で活動されている、発光さんの「発光!プラモ深夜族」に出演させていただいたことが縁で、発光さんが主催するプラモデル組み立て会に参加することになったんです

https://www.jcbasimul.com/radiokawagoe

ヒマチカ つながるガッコウ
つながるガッコウ, ワークショップ, ヒマチカ, ヒマチカコワーク, 川越, ガッコウ ヒマチカつながるガッコウは川越駅より徒歩5分のヒマチカコワークで趣味や習い事として、また人脈作りの場として参加できるさまざまなイベントを開催しています

基本、ゆる〜く制作する会なので、あまり難しいキットを持っていくわけにもいきません

ただ、せっかく買うなら最近ハマっている1/35の車輌にしたい!

と、いつもお世話になっている模型店、川越西口駅前の精文堂にて購入したわけです

製作会の感想はこのYouTubeでたしか話していたはず……!

クリーンフィニッシュで塗ってみよう!

組み立て会で途中まで作って以降、ほぼ放置だったのですが、ベンツ170Vを作った勢いでもう2024年内に完成させちゃおう! と押し入れから引っ張り出してきたのが12月26日

さすが天下のタミヤ製だけあり、びっくりするほど組みやすい!

直前まで作っていたのがバラバラ殺車事件のミニアートのベンツ170Vだったので、的確な一体化や、ピンの太さ。フィッティングにパーティングラインの位置調整、足回りのフィッティングなど感涙モノです

昔読んだ「タミヤ模型の仕事」で、1/12ホンダF1の設計で、優秀な若手の開発マンがこだわって足回りの部品数を増やそうとしていたのを、組みやすさを優先するため止めた、というエピソードを思い出します

今、自分の中では1/35民間車がマイブーム!

ただ、さすがにコマンドワーゲンは軍用車

オリジナルカラーでピカピカの仮想民間車にするのもいいんですけど、それだとクリアーがけや表面処理に時間を食って絶対年内に完成しません

ここはあくまで軍用車だけど、ノンウェザリングのクリーンフィニッシュで行ってみることに決定です

イメージ的には1/43ミニカーの軍用車みたいな仕上がりですね

塗装はスッキリジャーマングレー一色な、インストの塗装パターンにあるリヒャルト・ルオフ上級大将車としました

このルオフ氏、1883年のドイツ帝国時代に生まれ、一次大戦、二次大戦を軍人として戦い、1967に西ドイツで生涯を終えるという、ドイツ激動の時代を生き抜いた人物です

そんな人が乗ってた、と思うとコマンドワーゲンも只者では無い感がUPしてきませんか?

いや、決して迷彩するのが面倒くさい、とかじゃないですよ!

特別な表記の無い限り、ガイアノーツのガイアカラーを使用しています

パーツの透けを防ぎつつ、全体に重量感を出すため、全てのパーツの下地にMr.フィニッシングサーフェイサー1500を塗装

ボディカラーはジャーマングレーそのままだと濃すぎる印象だったので、パッケージのカラーイラストを参考にガイアのニュートラルグレーⅢにMrカラーのジャーマングレーを30%ほど混ぜた色で塗装しています

最後のツヤ消しはガンプラなどキャラクターモデルで愛用しているプレミアムフラットクリアーを吹いて仕上げています

ドア内張りはアルティメットブラック+マホガニーで作ったダークブラウンで塗り、ドアノブなどは本体色を筆塗りして塗り分けています

ここはマスキングすると大変面倒くさくなるんですけど、ラッカー筆塗りならリタッチも楽ですし、不明瞭になった境目はフラットブラックで墨入れしたら誤魔化せますし、大変ラクですね

最近、ラッカー筆塗りが最強の筆塗りなんじゃないかって気がしてます

シャシーは本来、基本が本体色で、ところどころにブラック、排気管がブラウンという色分けなのですが、ここは民間車っぽくMr.フィニッシングサーフェイサー1500ブラックで塗装しています

排気管も8番シルバーで塗り分け、カーモデル風の仕上げとしています

シャシーが一体だと本当に楽ですね

海外のソフトスキンだと、実車みたいにパーツがバラバラになっているキットも多いですよね。

ボディ乗せたくなくなる系のキットです

まあ、あれはアレですごく好きではあるんですが…

ちょっとピンボケですが、排気穴はピンバイスで開口し、ラッカー系塗料の塗膜を傷めない、水性ホビーカラーのつや消しブラックで内部を塗りつぶしてから、マジックリンで拭き取っています

タイヤはホイールと一体式です

ウェザリング仕上げなら迷わず筆で塗るんですが、スッキリキレイに仕上げたいので、マスキングして塗り分けました

マスキングテープを剥がした状態

ホイールとタイヤの境目のマスキングがビシッ!とキマると最高に気持ちいいですね♪

タイヤ内側のドラムブレーキはシルバーで塗って民間車風に

完成後もチラっとホイールやシャシー隙間から見えるので、オシャレないいアクセントになるんですよ

後部ジェリカンの十字は下地にアルティメットホワイトを吹き、マスキングしてから塗り分けています

昨年、本厚木にあるプラモデル制作スペース、ホビーゲートの店長である大場氏に3M製のシーリングマスキングテープ超粗面サイディングボード用というマスキングテープを教えてもらいまして

これが薄く、貼り重ねても段差ができづらい、柔らかいので局面にも馴染む、粘着力がしっかりしていて、時間が経っても剥がれてこない!という大変便利なものでして

このような凹凸がある部分でも、浮きやマスキング漏れなくビシッ!と一発で塗れるスグレモノ

このマスキングテープのお陰でマスキングが以前よりずっと楽になりました

超オススメアイテムです♪

シートはナチュラルブラウンにフラットブラックをまぜ、半光沢仕上げでレザーの質感を再現、フラットのボディとツヤを変えています

ロールバーのシルバーは8番シルバーを筆塗りで塗り分けています

ソフトトップは折りたたんだものをチョイス

昔、原稿料ボールで使った色を砂吹きして、ザラついた布の質感を再現しています

フロントグリルはマスキングしてゼッケンをレッドで塗り分け、デカールの密着力を高めるためにクリアーを吹いてからデカールを貼ります

デカールや余白をカットしておかないと、クリアー部分がはみ出すので要注意です!

車間表示棒の先端はクリーンさを強調するため、マスキングしてからエアブラシでアルティメットホワイトを吹き、しっかりと白を発色させました

ダッシュボードは計器類をブラックとホワイトで塗り分け、つや消し後、ガラス部分を透明度の高いUVクリアレジンである「星の雫ハードタイプ」で再現しています

さて、塗装が終わったのでいよいよパーツの組み立てです!

まずはシャシーにタイヤをセット!

エンジンが無いのに違和感を感じるのは、最近の海外ソフトスキンに毒されすぎているのかも?

まあ、無い方が早く完成しますし♪

プラ用接着剤や瞬間接着剤を使うと、うっかり塗膜に流れ込んだとき大惨事になってしまうので、塗膜を傷めない、二液混合タイプのエポキシ系接着剤で慎重に接着していきます

ただ、どうしても接着剤がわずかにはみ出た部分はつや消しボディだと大変目立ってしまうんですよね

そんなときはシタデルカラーの筆塗りフラットベースである、ラーミアンメディウムを塗ってはみ出し部分の光沢を消しています

フロントガラスはピカピカだとよりカーモデル風になるので、ハセガワのセラミックコンパウンドで磨き、プラの厚みが目立たないようフチをマッキーで黒く塗りつぶしたあと、タミヤモデリングワックスをかけてから接着しています

サイドミラーはハセガワミラーフィニッシュを張り込んでいます

完成!コマンドワーゲン!

コマンドワーゲン、完成しました!

12月31日のお昼ぐらいだったので、かなりギリギリでしたね

塗装はスラスラ進むんですけど、カーモデルを意識してクリーンに仕上げるとなると、最終組立てにすごく時間がかかるんですよね

ほら、エポキシ系接着剤って、固まるまで時間がかかりますし……

ツヤの違いで質感に変化を与えたインテリア

このクッション、皮のうねりとか、立体感が凄い!

さすがタミヤ製です

なにげにコマンドワーゲン最大の見せ場がサイドビュー

なだらかなボディ後部や、うっすらとした柔らかい曲面で構成されたドアなど、高級コーチビルダーの腕が一番振るわれている部分だと思いませんか?

軍用車はクリーンフィニッシュが似合う!

1/35民間車沼にハマった身としては「つや消しの軍用車は逃げではないか?」と思っていたのですが、完成してみると全然イケる!

ウェザリングしないと手抜きに見えたり、表面がのっぺりしすぎてリアルさに欠けるかも、とちょっぴりドキドキしていたのですが、1/43軍用車ミニカーのグレードアップ番みたいでカッコいい

まあ、元のキットがすごくイイ!ってのが大きいんですけどね♪

ミニアートのベンツ170Vとの並び

軍用車と民間車ですが、まったく違和感ありません!

ただ、タイヤはツヤを消しすぎたかな〜と

ベンツのほうはタイヤが別パーツだったので、Mr.フィニッシングサーフェイサー1500吹きっぱなしなのですが、タイヤはもうちょいツヤがあったほうがより自動車っぽくなるように感じました

でも、小さいベンツのほうがコマンドワーゲンの数倍パーツ数があるんですよね〜

どこに詰まっているんだろう?

シュタイヤー1500Aは戦後も使われていて、林業や農業、面白いところだと消防車にも使われています

なんでも、消防車が足りなかったので改造してつかったんだとか

ピカピカ仮想民間車輌として作っても、全然問題なさそうですね

もし、ミニアートからシュタイヤー1500Aが発売されたら、消防車バージョンとか絶対出そう!

というわけでタミヤ1/35 シュタイヤー1500Aコマンドワーゲンでした♪

今回は自分が手慣れている、ガンプラのフラット&クリーンつや消し仕上げと同じ工程だったのでスンナリと作れました

無理に光沢や民間版にこだわらなくていいなら、難物だけどマニアックな車輌のキットでも、そんなに苦労せず作れそうな気がしてきました……ほら、ローデンとかローデンとかローデンのキットですね(笑)

さ、次は何を作ろうかな〜♪

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この記事を書いた人

 こんにちは! プロモデラー林哲平と申します。

 2005年より模型専門誌ホビージャパンの編集部に在籍。

 趣味、仕事合わせて3000体以上のプラモデルを組み立てた経験を活かし、プラモの楽しさをみんなに伝えたい!と実体験から得た製作テクニックなどを日々発信しています。
 

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