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ポリパテってどんなもの? 伝統のガンプラ用改造素材であるポリエステルパテの特性と使い方をプロモデラーが徹底解説!

 こんにちは!林哲平です。

 よく大改造したガンプラの製作途中写真なんかで、全身が真っ黄色になっていることがありますよね?

 これはポリエステルパテ、通称ポリパテを使って改造されたものなんです。

 「大改造やフルスクラッチならポリパテ」という時代が長く続いたこともあり、ポリパテは現在でもまだ使う人が多いマテリアルです。

 今回はそんなポリパテの使い方から歴史まで、ガツンと解説しちゃいますよ〜♪

 

目次

ポリパテの使い方。主剤と硬化材の配分が成功の秘訣!

 こちらは一般の模型店で購入できる中で、一番入手しやすく一般的であるタミヤのポリパテ。

 色はグリーンとイエローの二色ありますが、ガンプラに使うならば一番馴染み深いイエローを使っています。

 ポリパテは主剤と硬化剤を混ぜ、二剤を混ぜた化学反応で硬化するパテです。

 主剤と硬化剤の配合比ですが、これはポリパテの銘柄によって違います。

 タミヤのポリパテだと「主剤と硬化剤を同じ長さに」と指定されているので、このように出します。

 なお、硬化剤を入れる比率ですが、気温が高い夏場ならば少なめでも大丈夫ですが、冬だと少し多めに入れておいたほうが固めやすいです。

 これはポリパテの硬化が化学反応の熱によって促進されるため。

 なので早くポリパテを硬化させたいときはコタツに入れたりするといいんですよ。

 モデラーの部屋に年中コタツが常備されているのはそういう理由なんです(笑)

 ヘラやつまようじなどでしっかりと混ぜ合わせます。

  混ぜ方が足りないと白い洲が出来て硬化不良を起こし、削ったときに固まっていない塊がゴロン!と出てきて泣くことになるので要注意です。

 混ぜ合わせると30分くらいで硬化が始まり、外気温にもよりますが8〜16時間ぐらい経てばカチカチに硬化します。

 ポリパテはエポパテに比べるとすんごく硬いので、半硬化ぐらいの少し柔らかい状態で大まかに削っておくと後々の作業が楽ですよ〜

ポリパテ工作最大のメリット「細かい部分の盛り削りが容易である!!!」

 私が思うポリパテ最大のメリットは、パテ同士の食いつきが非常によく、何度も盛り削りが可能であり、複雑な形状で納得いくまで工作が必要な部分…… 例えばガンダムのマスクをフルスクラッチするときなどはマストアイテムと言えるでしょう。

 それではポリパテを使ったガンダムマスクのスクラッチ方法を見て行きましょう。

 混ぜたポリパテをガンダムのマスクに盛り付けて行きます。

 芯となるマスクはどうせ見えなくなるので、180番紙ヤスリなどで表面を荒らしておくとパテの食いつきが良くなるのでオススメです。

 硬化したらナイフで削ります。

 ガンダムのマスクのような精密さとシャープさを必要とされるパーツをポリパテで作るときは必ず完全硬化してからにすること。

 半硬化だとアゴの部分とか削ってるときにポロっと欠けちゃうことが多いんですよ。

 削ったら紙ヤスリで形状を整えます。

 最初はだいたいの形を作れればいいので、180番くらいの粗めの紙ヤスリでしっかり整形していきましょう。

 削ったら削りすぎた部分とか、自分で納得のできない部分などにポリパテを盛り足します

  盛り重ねるときは硬化不足だと剥がれやすくなるので、しっかりと硬化時間をとりましょう。

 と、これを繰り返していくとだんだん自分の理想の形に近づいて行きます。

 ヘルメットに組み込んでバランスを確認して……

 完成です!

 こちらは「ガンダムビルドファイターズ ガンプラ炎の教科書」掲載のNZ-111ケーニヒスマンサの頭部です。

  納得いくまで工作できるのがポリパテのいいところ。

 ガンダムの顔だとνガンダムのようなへの字が多いデザインではなく、ZやマークVのようなへの字が無いもののほうが作りやすいのでチャレンジするなら楽なほうからやってみるといいですよ。

ポリパテの溶剤は「スチレンモノマー」

 フルスクラッチ用などで、キロ入りのワークのモリモリなんかを缶で大量買いすると、缶の底に溜まった主剤がカチカチに固まってしまうことがあります。

 スクラッチモデラーあるあるですよね。

  そんなときはポリパテの専用溶剤であるスチレンモノマーを使って粘度を調整しましょう。

 「 ラッカー溶剤を混ぜてOK」という人もいますが、ラッカー溶剤だと非常に脆く砕けやすく、硬化後もヒケやすくなるので注意してくださいね。

 スチレンモノマーは普通の模型店ではまず扱っていないですが、ホームセンターなどで売っていることがあります。

 ネットでメーカーから直接買うのが一番ですよ。

 昔は本当にどこにも売ってなくて、手に入れるのにすんごく苦労したのが懐かしいなあ。

 

ポリパテのメリット①安い

ポリパテはいろんな特性がありますが、最大のメリットは価格が模型用パテの中だと一番安いということです。

 モデラーなら経験あると思うんですけど、建築途中の家の前を通ったとき「あれ?なんでポリパテの匂いがするんだろう?」と嬉しくてテンション上がることありませんか?

 ポリパテは元々壁補修用の素材を模型用に転用したものなので、大量に使うことを前提にした価格設定となっているので、安いんですよね。

 模型用だけではなく、ホームセンターで直接「ナックス」のような建築用ポリパテを買うとすんごいでっかい缶でお安く買えたりもしますし。

 「でかいものをフルスクラッチしたいけれど、金がない!」という人にはポリパテっていいんですよ。

ポリパテのメリット②硬くシャープな造形に向いているのでメカと相性がいい

 ポリパテは固まると非常に硬くなるんですが、そのぶんエッジとかをしっかり出しやすいので、シャープで硬い造形、つまりガンダムなどのロボット造形と非常に相性が良いんです。

 びしっ!とエッジがバリバリ立ったメカって本当〜にかっこいいですからね。

 ちょっと昔のホビージャパン見ると全身真っ黄色のフルスクラッチ作例の途中写真とかよく見かけますが、それは必然だったんですよね。

ポリパテのメリット③盛り削りが容易

先程も紹介しましたが、ポリパテは素材同士の食いつきが良く、盛り削りが容易なのでやり直しが非常に容易なんです。

 模型って基本失敗するのが当たり前の世界なのでリカバリーしやすいかどうかってすっごい大事なんですよ。

 ガンダムの顔を一発で彫れる人なんてなかなかいませんからね。

ポリパテのデメリット①臭い!!!!

 と、メリットも多いポリパテなんですが、現在ポリパテを使っているモデラーはすんごく減りました。

 それはいろんなデメリットがあるからなんですね。

 私ですら、もうガンダムの顔を作るぐらいでしかポリパテは使いませんからね……

 ここからはポリパテのデメリットについて解説していきます。

 何よりもポリパテ最大の欠点は「臭い」ということでしょう。

 有機溶剤により希釈されている素材なので、ものすごくシンナー臭いんです。

 この臭いが苦手で全く使えないという人も多いです。

 私も小学生のとき、実家で初めて使ったときは母に怒られましたからね(笑)

 もちろん体にも悪いので、ポリパテ使うときはマスクつけておいたほうがいいですよ。

ポリパテのデメリット②気泡が出る

 これです。

 ポリパテはゲル状素材を混ぜ合わせて硬化させるため、内部に気泡ができるんですよ。

 削って整形していると必ず気泡がいっぱい出てきて、これを埋めるのがもう、本当に面倒なんですよね。

 気泡を埋めて、削ったらまた出てきてを何度も繰り返すのはポリパテ工作の宿命でもあるんです。

 このあたり同じ造形用素材であるエポキシパテは気泡とは無縁なので、大きく差を開けられたポイントですね。

ポリパテのデメリット③削るのが大変!

 ポリパテはゲル状のペーストを持っていく都合状、最初から自分の思う形に盛ることができないので、大量に持って大改造するときとか削るのが大変なんですよ。

 あらかじめ半硬化状態で削っておくのならともかく、うっかり完全硬化してから大きく削ると硬くて全然削れなくて、指が痛くなることがあったり。

 ポリパテ全盛期にはモーターツールが流行しましたが、そりゃあナイフで全部手彫りするのは大変すぎますよね。

ポリパテの歴史。いかにポリパテは流行し、廃れて行ったのか。

 ところで、ポリパテはなぜこれほどまでに模型用パテとして一時代を築いたのでしょうか?

 これにはガンプラブームとホビージャパンが果たした、深い理由があるんです。

 1979年の「機動戦士ガンダム」大ヒットによりガンダムが世間で大人気になるわけですが、ガンプラが発売されるより前にMSをフルスクラッチしたモデラーがいました。

 日本初のザクを作ったとされている、岩瀬昭人氏によるフルスクラッチのザクです。

 このザクは当初作例というわけではなく、模型店に展示されていたものを当時のホビージャパン編集者であった柿沼秀樹氏がホビージャパンで紹介したのです。

 その頃模型用素材というのは今と比べ全然充実していなかったのですが、岩瀬氏は壁補修用に使われていた、ポリパテでザクを作っていたのです!

 そして岩瀬氏はホビージャパンで伝説的な1/100フルスクラッチガンダムを製作。その作例記事により、「ガンダムを0から作れるすごい模型用のパテがある!」と日本全国に知らしめることとなったのです。

 そこから模型用のパテとしてポリパテが少しずつ普及しはじめ、「フルスクラッチならポリパテ」というのが常識となっていったわけです。

 この辺り経緯は当の柿沼秀樹氏ご本人の執筆による「HOW TO BUILD ホビージャパン ガンプラブームを担った雑誌ができるまで」に詳しい経緯が掲載されているので気になる人はぜひ読んでみてください。

 こうして模型用パテの王様だったポリパテですが、1990年代後半から2000年ぐらいにかけて、容量が大きく、安価で使いやすい高性能エポキシパテや瞬間接着パテなどの使いやすいパテが数多く登場したのをきっかけに、少しずつ使う人が少なくなっていきました。

 現在では昔からポリパテ一筋!という人以外はあまり使うことは少なくなってきたのです。

 ポリパテに歴史あり!ですね

ポリパテ滅びぬ!何度でも蘇るさ!

 と、現在使う人が減っているポリパテですが、そのシャープな造形や盛り削り可能な性能、安価でガンガン使えるということは大きな利点で、今なお愛用している人も多いです。

 「これからガンプラの改造始めるぜ!」

 という改造初挑戦の人には正直オススメできませんが、ガンダムの顔など細かい造形をするときならば、私はポリパテが一番だと思います。

 ポリパテ、ぜひ使いこなしてみてくださいね♪

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この記事を書いた人

 こんにちは! プロモデラー林哲平と申します。

 2005年より模型専門誌ホビージャパンの編集部に在籍。

 趣味、仕事合わせて3000体以上のプラモデルを組み立てた経験を活かし、プラモの楽しさをみんなに伝えたい!と実体験から得た製作テクニックなどを日々発信しています。
 

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